「カエルが出会ったキリスト」
ある日。一匹のカエルが教会に忍び込みました。人間があがめるイエス・キリストとは、どれほど偉い神なのか、見てみたかったのです。ところが、カエルが見たのは、裸で木に刺さって血を流し、死にかけている人の絵でした。「こんな弱そうな神がキリストなのか?」
そのとき、カエルは思い出しました。『モズのはやにえ』。あの恐ろしい鳥にさらわれ、木の枝にプスっと刺されて、そのまま放置され苦しみながら死んで干からびてしまう、カエルにとってはもっとも忌まわしい死に方。目の前のキリストの姿がそれと重なりました。
「このキリストは、おれたちだ...!」
人間は、賢くて力も強く、道具や武器を使って世界を支配している。その人間がひれ伏して拝む相手は、カエルのように裸で、苦しみながらただ死んでいく神。おれたちの死を死んでくれるキリスト。カエルは心の底から泣きました。
おれたちカエルは裸。ツノも牙も爪も、鱗も無い。鳥に食われ蛇に呑まれ、車に轢かれて死んでいくおれたち、でも神が、神がおれたちのように死んでくれるのだから、おれたちのいのちも死も、決して無駄ではないのだ。そう思うと、心が震えました。短い命でも、カエルなりの最善を生き抜こうと、外に飛び出していくカエルでした。
S.M 姉
0 件のコメント:
コメントを投稿